日本コカ・コーラ株式会社~クリエイターの卵に送るメッセージ

インタビューに応じてくれたのは…
日本コカ・コーラ株式会社 デザイン イノベーション
  クリエイティブ ディレクター 松永 秀隆(Hide)さん

1988年、英国レイベンズボーン カレッジ オブ デザイン アンド コミュニケーションズ卒業。
2007年、日本コカ・コーラ株式会社入社。パッケージ、プリント広告、自動販売機などのビジュアルデザイン・ブランディングを統括する。

主な担当ブランドに、コカ・コーラ、コカ・コーラ ゼロ、ジョージア、い・ろ・は・す、太陽のマテ茶など。
日本のみならず、アジア太平洋地域のデザインにも携わる。
世界的に有名なコカ・コーラの日本支社でデザインイノベーション部クリエイティブディレクターをされているHideさんにお話を伺いました。

Hideさんは、英国の大学を卒業されたのち、現地のデザイン会社で食品・飲料、航空会社、金融企業、IT企業などのブランディングに携わってきた経歴をお持ちです。
2007年、日本コカ・コーラ株式会社に入社後、コカ・コーラ、コカ・コーラゼロ、ジョージア、い・ろ・は・す、太陽のマテ茶などのブランディングを手掛け、国内外からの評価も高く、講演していただいた優クリエイト主催のセミナーも大盛況でした。

 

Q.“ブランディング”について学生のころから興味はあったのですか?

その当時は、ありませんでした。とにかくデザインの仕事をやりたかったので、高校卒業後に地元の印刷会社に入り、その後、東京のデザイン会社に転職して、そこでCIブームの流れの中で興味のあったマーク作りをしていました。

それからイギリスに渡り大学に入学して出会ったのが、タイポグラフィーデザインでした。そこで、文字を通しての「コミュニケーション」(どのようにして伝えるのか)を学んだことと、以前から興味のあったマーク(アイコン)作りが合わさったのが、“ブランディング”だったというわけです。



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Q.お仕事をされて、理想と現実のギャップはありましたか?

仕事に対して高い理想はそもそもないんです。デザインをするうえで、意識していたのは趣味と実益で、自分が楽しめる事が仕事になればいいなと思っていました。

あの会社で働きたいというのはありませんでしたが、たまたまイギリスで入社したデザイン会社、ランドーアソシエイツがデザインを手掛けていたのが学生の時に見たアリタリアというイタリアの航空会社だったこともあって、飛行機をデザインしたいと思っていたら、実際に他の航空会社のプロジェクトに携わることができました。

その時々で自分の興味のあるものを見つけ、それを運良くやり遂げてきたので、理想と現実のギャップというものは感じませんでしたね。デザインは、自分が楽しくないと続けられないと思います。



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Q.学生のうちに、やっておいた方がいいことはありますか?

好き嫌いを意識して、その理由(Why?とWhy not?)を言えるようになることですね。

ぼくは、物事を見るたびに好き嫌いを昔から意識していました。その後、なぜぼくはそれが嫌いなんだろう、好きなんだろうと興味を持ちその理由を考えるようにし始めました。
そのころから、自分のデザインに対して「なぜ」そうなのかが言えていたので、自分のデザインアイデアが多くのクライアントに受け入れられるようになったのだろうと思います。

学生のうちにできることは、「なぜ」を言えるようにすることで、自分の考え方(スタイル)を理解することなのではないかと思います。
自分の表現スタイルを見つけること、つまり、“信念”というか自分のデザインポリシーを見つけることです。それは、クリエイティブに対して、自分はどのような考えを持っているのかを発見することでもあります。



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Q.クリエイターとして必要な要素は何ですか?

“ロジック”(論理)ですね。ロジックがないと、デザインの目的が伝わりません。

本当にすごいクリエイターとは、センス(アイデア)と“ロジック”をもってデザインしている人です。
ぼくは、デザインとは、センスとロジックが融合して出来るサイエンスだと思っています。

あとは、経験値や知識の蓄積です。クリエイターは経験値で差が出ると思います。
いろいろな事を試してみないと、クリエイターとしてもデザインの幅が狭くなります。例え、その試みが直接デザインにつながらなくても、次への経験値になります。
豆知識でも蓄積しておく必要があり、経験や知識の引き出しを早く多く取り出せるようにしておくことが大事ですね。



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Q.クリエイターをめざす学生へメッセージをお願いします。

デザインを仕事にしたい人は、好き嫌いをはっきりさせ、日頃から感覚的に好き嫌いを言うのではなく、その理由を言えるようにしてください。
それを蓄積していくと、自分のスタイルが見えてきます。自分の感性を、客観的にセンスとロジックで“計算”して考えることが大切です。デザインはロジックだけでは面白くなく、その中にポンとセンスを入れるから面白いんです。「WE CAN NOT NOT DESIGN」、デザインは誰にでもできますが、仕事として研ぎ澄まされていくのはセンス(アイデア)とロジックがあるかどうかです。

あとは、アイデアを思いついたら頭で判断せずにまずはやってみることです。だめだったらそれでいい。実は悩んでいるだけでは、それほどきれいなデザインには仕上がりません。
ぼくは自分が仕事を楽しまないと、人々に共感してもらえる デザインはできないと思っています。自分の考えていることはデザインを通して伝わります。自分がほしいもの、自分が体に身に付けたくなるものをデザインしてください。

あとは、出来れば日本から出てみることですね。いろいろな考え方やその違いを目の当たりにすると視野が広がります。世界は確かに広いですが、環境的にはすぐつながれるくらい狭いですから、海外にも目を向けて、成長出来るデザインを心掛けてください。



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インタビューを終えて

質問にひとつひとつ丁寧に、そして気さくに答えてくださいました。

お話を聞いていると、Hideさんの中にデザインが”好き”という核のようなものがあって、それをおもいっきり楽しんでいらっしゃることが伝わってきました。
中でも、ブランディングをしている時にアイデアが出なくて悩むけれども、悩んでいる時もパズルを解くようで”楽しい”という言葉が印象的でした。
自分の”好き”のアンテナに従ってみると、道が開けるのではないかと思いました。

Hideさん、貴重なお話をありがとうございました!

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